有機溶剤健康診断とは
(1)有機溶剤健康診断の実施義務(有機則第29条第2項)
事業者は、「(2)有機溶剤健康診断を実施すべき業務」に常時従事する労働者に対して、雇入れの際、その業務ヘの配置替えの際、及びその後6か月以内ごとに1回、定期に、「(3)有機溶剤健康診断の項目」について、医師による健康診断を行わなければなりません。
(2)有機溶剤健康診断を行うべき業務(令第22条第1項第6号)
屋内作業場又はタンク、船舶の内部、車両の内部、タンクの内部、ピットの内部、坑の内部、ずい道の内部、暗きょまたはマンホールの内部、箱桁の内部、ダクトの内部、水管の内部、屋内作業場などの通風が不十分な場所において、次に掲げる「有機溶剤」を製造し、又は取り扱う業務で、屋内作業場等(第三種有機溶剤等にあっては、タンク等の内部に限る。)における有機溶剤業務のうち、次の1と2以外の業務
- 屋内作業場等のうち、タンク等の内部以外の場所において、その業務に労働者を従事させる場合で、作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量が有機溶剤等の許容消費量を常態として超えないとき。
- タンク等の内部においてその業務に労働者を従事させる場合で、1日に消費する有機溶剤等の量が有機溶剤等の許容消費量を常に超えないとき。
「有機溶剤」(令別表第6の2)
- アセトン
- イソブチルアルコール
- イソプロピルアルコール
- イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)
- エチルエーテル
- エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ)
- エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート)
- エチレングリコールモノ―ノルマル―ブチルエーテル(別名ブチルセロソルブ)
- エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)
- オルト―ジクロルベンゼン
- キシレン
- クレゾール
- クロルベンゼン
- クロロホルム
- 酢酸イソブチル
- 酢酸イソプロピル
- 酢酸イソペンチル(別名酢酸イソアミル)
- 酢酸エチル
- 酢酸ノルマル―ブチル
- 酢酸ノルマル―プロピル
- 酢酸ノルマル―ペンチル(別名酢酸ノルマル―アミル)
- 酢酸メチル
- 四塩化炭素
- シクロヘキサノール
- シクロヘキサノン
- 一・四―ジオキサン
- 一・二―ジクロルエタン(別名二塩化エチレン)
- 一・二―ジクロルエチレン(別名二塩化アセチレン)
- ジクロルメタン(別名二塩化メチレン)
- N・N―ジメチルホルムアミド
- スチレン
- 一・一・二・二―テトラクロルエタン(別名四塩化アセチレン)
- テトラクロルエチレン(別名パークロルエチレン)
- テトラヒドロフラン
- 一・一・一―トリクロルエタン
- トリクロルエチレン
- トルエン
- 二硫化炭素
- ノルマルヘキサン
- 一―ブタノール
- 二―ブタノール
- メタノール
- メチルイソブチルケトン
- メチルエチルケトン
- メチルシクロヘキサノール
- メチルシクロヘキサノン
- メチル―ノルマル―ブチルケトン
- ガソリン
- コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む。)
- 石油エーテル
- 石油ナフサ
- 石油ベンジン
- テレビン油
- ミネラルスピリツト(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリツト、ホワイトスピリツト及びミネラルターペンを含む。)
- 前各号に掲げる物のみから成る混合物
※備考
①第一種有機溶剤とは、有機溶剤等のうち、次に掲げる物をいう。
- 上記「有機溶剤」の14、23、27、28、32、36、38に掲げる物
- 1に掲げる物のみから成る混合物
- 1に掲げる物と当該物以外の物との混合物で、1に掲げる物を当該混合物の重量の5パーセントを超えて含有するもの
②第二種有機溶剤等とは、有機溶剤等のうち、次に掲げる物をいう。
- 上記「有機溶剤」1から13まで、15から22まで、24から26まで、29から31まで、33から35まで、37又は39から47までに掲げる物
- 1に掲げる物のみから成る混合物
- 1に掲げる物と当該物以外の物との混合物で、1に掲げる物又は①の1に掲げる物を当該混合物の重量の5パーセントを超えて含有するもの(①の3に掲げる物を除く。)
③第三種有機溶剤等とは、有機溶剤等のうち、第一種有機溶剤等及び第二種有機溶剤等以外の物をいう。
(3)有機溶剤健康診断の項目
① 業務の経歴の調査
② 有機溶剤による健康障害の既往歴並びに自覚症状及び他覚症状の既往歴の調査、下表の「項目」(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査に限る。)についての既往の検査結果の調査、及び④尿中の蛋白の有無の検査、下表の「項目」の検査(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査を除く。)、貧血検査、肝機能検査、腎機能検査(尿中の蛋白の有無の検査を除く。)、神経内科学的検査についての既往の異常所見の有無の調査
③ 有機溶剤による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査
④ 尿中の蛋白の有無の検査
⑤ 下表の「有機溶剤等」の区分に応じた「項目」の検査
(有機則別表)
| 有機溶剤等 | 項目 | |
| (1) | 一 エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ) 二 エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート) 三 エチレングリコールモノーノルマルーブチルエーテル(別名ブチルセロソルブ) 四 エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ) 五 前各号に掲げる有機溶剤のいずれかをその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
血色素量及び赤血球数の検査 |
| (2) | 一 オルトージクロルベンゼン 二 クレゾール 三 クロルベンゼン 四 クロロホルム 五 四塩化炭素 六 一・四―ジオキサン 七 一・二―ジクロルエタン(別名二塩化エチレン) 八 一・二―ジクロルエチレン(別名二塩化アセチレン) 九 一・一・二・二―テトラクロルエタン(別名四塩化アセチレン) 十 前各号に掲げる有機溶剤のいずれかをその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(以下「肝機能検査」という。) |
| (3) | 一 キシレン 二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
尿中のメチル馬尿酸の量の検査 |
| (4) | 一 N・N―ジメチルホルムアミド 二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
一 肝機能検査 二 尿中のN―メチルホルムアミドの量の検査 |
| (5) | 一 スチレン 二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
尿中のマンデル酸の量の検査 |
| (6) | 一 テトラクロルエチレン(別名パークロルエチレン) 二 トリクロルエチレン 三 前二号に掲げる有機溶剤のいずれかをその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
一 肝機能検査 二 尿中のトリクロル酢酸又は総三塩化物の量の検査 |
| (7) | 一 一・一・一―トリクロルエタン 二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
尿中のトリクロル酢酸又は総三塩化物の量の検査 |
| (8) | 一 トルエン 二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
尿中の馬尿酸の量の検査 |
| (9) | 一 二硫化炭素 二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
眼底検査 |
| (10) | 一 ノルマルヘキサン 二 前号に掲げる有機溶剤をその重量の5パーセントを超えて含有する物 |
尿中の二・五―ヘキサンジオンの量の検査 |
項目の省略
「(3)有機溶剤健康診断の項目」の⑥下表の「有機溶剤等」の区分に応じた項目の検査(定期のものに限る。)は、前回の健康診断において、表の「項目」(尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査に限る。)について健康診断を受けた者については、医師が必要でないと認めるときは、その項目を省略することができます。
(4)有機溶剤健康診断の追加の健康診断
事業者は、「(2)有機溶剤健康診断を実施すべき業務」に常時従事する労働者で、医師が必要と認めるものについては、「(3)有機溶剤健康診断の項目」のほか、次の項目の全部又は一部について、医師による健康診断を行わなければなりません。
① 作業条件の調査
② 貧血検査
③ 肝機能検査
④ 腎機能検査(尿中の蛋白の有無の検査を除く。)
⑤ 神経内科学的検査
(5)労働者の健康診断受診義務
労働者は、事業者が行なう健康診断を受けなければならない義務があります。
ただし、事業者が指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合で、他の医師又は歯科医師の行なう労働安全衛生法に基づく健康診断に相当する健康診断を受けて、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでありません。
(6)緊急診断(有機則第30条の4)
事業者は、労働者が有機溶剤により著しく汚染され、又はこれを多量に吸入したときは、速やかに、その労働者に医師による診察又は処置を受けさせなければなりません。
(7)健康診断結果の記録
事業者は、この健康診断の結果に基づき、有機溶剤健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければなりません。
(8)健康診断の結果についての医師からの意見聴取
事業者は、この健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者の健康診断の結果に基づいて、その労働者の健康を保持するために必要な措置について、次の方法によって、医師の意見を聴かなければなりません。
① この健康診断が行われた日(上記(5)のただし書きの場合は、その労働者が健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出した日)から3か月以内に行うこと。
② 聴取した医師の意見を有機溶剤健康診断個人票に記載すること。
(9)健康診断実施後の措置
事業者は、健康診断の結果についての医師の意見を勘案して、その必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、次のような適切な措置を講ずる必要があります。
① 就業場所の変更
② 作業の転換
③ 労働時間の短縮
④ 深夜業の回数の減少等の措置
⑤ 作業環境測定の実施
⑥ 施設又は設備の設置又は整備
⑦ 医師の意見を衛生委員会、安全衛生委員会、労働時間等設定改善委員会へ報告
⑧ その他の適切な措置
<参考>
・
健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針
(10)健康診断の結果の通知
事業者は、この健康診断を受けた労働者に対して、遅滞なく、健康診断の結果を通知しなければなりません。
(11)健康診断結果報告義務
事業者は、この健康診断(定期のものに限ります。)を行ったときは、遅滞なく、有機溶剤等健康診断結果報告書(様式第三号の二)を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
(12)健康診断の特例(有機則第31条)
事業者は、(1)の有機溶剤健康診断と(4)有機溶剤健康診断の追加の健康診断を3年以上行い、その間、その健康診断の結果、新たに有機溶剤による異常所見があると認められる労働者が発見されなかったときは、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、その後における(1)の有機溶剤健康診断と(4)有機溶剤健康診断の追加の健康診断、有機溶剤等健康診断個人票の作成及び保存、医師からの意見聴取を行わないことができます。
この所轄労働基準監督署長の許可を受けようとする場合は、「有機溶剤等健康診断特例許可申請書」(様式第四号)に申請に係る有機溶剤業務に関する次の書類を添えて、所轄労働基準監督署長に提出します。
① 作業場の見取図
② 作業場に換気装置その他有機溶剤の蒸気の発散を防止する設備が設けられているときは、その設備等を示す図面及びその性能を記載した書面
③ その有機溶剤業務に従事する労働者について申請前3年間に行った有機溶剤健康診断と(4)有機溶剤健康診断の追加の健康診断の結果を証明する書面
また、許可を受けた事業者は、申請書及び書類に記載された事項に変更を生じたときは、遅滞なく、文書で、その旨を所轄労働基準監督署長に報告しなければなりません。
なお、上記の変更の報告を受けた場合や事業場を臨検した場合に、その許可に係る有機溶剤業務に従事する労働者について、新たに有機溶剤による異常所見を生ずるおそれがあると労働基準監督署長が認めたときは、その許可が取り消されます。
FAQ
有機溶剤健康診断の実施方法について教えてください。
会社(担当者)が、有機溶剤健康診断を実施する場合には、次の手順で進めます。
① 会社で使用しているシンナーや塗料などの有機溶剤を含有しているもの(含有物)に、どのような有機溶剤が使用されているのか、を確認します。わからない場合は購入元(製造元)に確認しましょう。
- (例)ここでは、確認したらキシレンとトルエンだった、とします。
② 使用している(含有している)有機溶剤の種類が確認できたら、上記の表(有機則別表)を見て、検査項目を確認します。
- (例)使用している有機溶剤がキシレンとトルエンの場合、(3)と(8)です。キシレンの検査項目は、「尿中のメチル馬尿酸の量の検査」、トルエンの検査項目は、「尿中の馬尿酸の量の検査」となります。
③ 有機溶剤健康診断を実施している医療機関等に、使用している有機溶剤の有機溶剤健康診断が実施できるかを確認します。
- (例)有機溶剤健康診断を実施している医療機関等に、キシレンとトルエンの有機溶剤健康診断が実施できるか(具体的には、「尿中のメチル馬尿酸の量の検査」と「尿中の馬尿酸の量の検査」ができるか)を確認します。
※ 医療機関によっては、有機溶剤健康診断のすべてが実施できるとは限らないため。
④ 有機溶剤健康診断を医療機関等で実施します。検査項目は、上記(3)①から⑤までの項目です。
⑤ 健康診断の結果を医療機関等から受け取ります。その結果を受診した労働者に通知します。また、遅滞なく、有機溶剤等健康診断結果報告書(様式第3号の2)を所轄労働基準監督署長に提出します。
⑥ 有所見者があった場合は、この結果について、産業医を選任している事業場では、産業医の意見を聴きます。選任義務のない事業場(50人未満の事業場)では、受診した医療機関等の医師の意見を聴きます。
⑦ 担当者は、衛生委員会(設置義務のない事業場では経営者と安全衛生推進者の会議など)にはかるなどの方法で、有所見者をなくすための措置について、次の事項を実施するかどうか、検討します。
● 労働者への個別の措置として、(労働者の実情を考慮して)
- 就業場所の変更
- 作業の転換
- 労働時間の短縮
- 深夜業の回数の減少等の措置
● 事業場の全体の措置として、
- 作業環境測定の実施
- 施設又は設備の設置又は整備(例えば、局所排気装置などを新たに増やすなど)
- 医師の意見を衛生委員会、安全衛生委員会、労働時間等設定改善委員会へ報告
- その他の適切な措置(例えば、防毒マスクの使用徹底の教育など)
⑧ 検討した事項を実施します。

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