じん肺健康診断とは
(1)じん肺とは(じん肺法第2条)
「じん肺」とは、粉じんを吸入することによって、肺に生じた線維増殖性変化を主体とし、これに気道の慢性炎症性変化、気腫性変化を伴った疾病をいいます。このじん肺は、現在の医学では病変を回復させる有効な治療法はなく、一度かかると一生治らないといわれています。
「合併症」とは、じん肺と合併した肺結核などのじん肺の進展経過に応じて、じん肺と密接な関係があると認められる疾病をいいます。
また、「粉じん作業」とは、その作業に従事する労働者がじん肺にかかるおそれがあると認められる作業をいいます。
(2)じん肺管理区分とは(じん肺法第4条)
粉じん作業に従事する労働者及び粉じん作業に従事する労働者であった者は、じん肺健康診断の結果に基づいて、次の表に掲げるところにより、管理一から管理四までに区分して、健康管理を行う必要があります。この区分をじん肺管理区分といいます。
じん肺管理区分 |
じん肺健康診断の結果
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|---|---|
管理一 |
じん肺の所見がないと認められるもの
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管理二 |
エックス線写真の像が第一型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
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管理三 |
イ エックス線写真の像が第二型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
ロ エックス線写真の像が第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のものに限る。)でじん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
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管理四 |
(1)エックス線写真の像が第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1を超えるものに限る。)と認められるもの
(2)エックス線写真の像が第一型、第二型、第三型又は第四型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの
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(3)じん肺健康診断の実施義務
1.就業時健康診断の実施義務(じん肺法第7条)
事業者は、新たに常時粉じん作業に従事することとなった労働者に対して、その就業の際、じん肺健康診断を行わなければなりません。
ただし、次の労働者は除かれます。
① 新たに常時粉じん作業に従事することとなった日前に常時粉じん作業に従事すべき職業に従事したことがない労働者
② 新たに常時粉じん作業に従事することとなった日前1年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺の所見がないと診断された労働者、又はじん肺管理区分が管理一と決定された労働者
③ 新たに常時粉じん作業に従事することとなった日前1年以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理二又は管理三イと決定された労働者
④ 新たに常時粉じん作業に従事することとなった日前6月以内にじん肺健康診断を受けて、じん肺管理区分が管理三ロと決定された労働者
2.定期健康診断(じん肺法第8条)
事業者は、次に掲げる労働者に対して、それぞれに掲げる期間以内ごとに1回、定期的に、じん肺健康診断を行わなければなりません。
① 常時粉じん作業に従事する労働者(②に掲げる者を除く。) 3年
② 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 1年
③ 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 3年
④ 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理三である労働者(厚生労働省令で定める労働者を除く。) 1年
3.定期外健康診断(じん肺法第9条)
事業者は、次の場合には、その労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断を行わなければなりません。
① 常時粉じん作業に従事する労働者(じん肺管理区分が管理二、管理三又は管理四と決定された労働者を除く。)が、
一般健康診断又は
特殊健康診断において、じん肺の所見があり、又はじん肺にかかっている疑いがあると診断されたとき。
② 合併症によって、1年を超えて療養のため休業した労働者が、医師により療養のため休業を要しなくなったと診断されたとき。
③ 合併症によって、1年を超えて療養した労働者が、医師により療養を要しなくなったと診断されたとき(②の場合を除く。)。
④ 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者が、
定期健康診断又は
特定業務従事者の健康診断の項目のうち④胸部エックス線検査及び喀痰検査において、肺がんにかかっている疑いがないと診断されたとき以外のとき。
4.離職時健康診断(じん肺法第9条の2)
事業者は、次のに掲げる労働者で、離職の日まで引き続き1年を超えて使用していたものが、その離職の際に、じん肺健康診断を行うように求めたときは、その労働者に対して、じん肺健康診断を行わなければなりません。
ただし、その労働者が直前にじん肺健康診断を受けた日から離職の日までの期間が、次に掲げる労働者ごとに、それぞれに掲げる期間に満たないときは、この必要はありません。
① 常時粉じん作業に従事する労働者(②に掲げる者を除く。) 1年6か月
② 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三であるもの 6月
③ 常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二又は管理三である労働者 6か月
(3)じん肺健康診断の項目(じん肺法第3条)
① 粉じん作業についての職歴の調査及びエックス線写真(直接撮影による胸部全域のエックス線写真をいいます。以下同じ。)による検査
② 次の方法による胸部に関する臨床検査及び肺機能検査(①の調査及び検査の結果、じん肺の所見がないと診断された者以外の者のみ。)
- 胸部に関する臨床検査
- 既往歴の調査
- 胸部の自覚症状及び他覚所見の有無の検査
- 肺機能検査(エックス線写真に一側の肺野の3分の1を超える大きさの大陰影(じん肺によるものに限る。)があると認められる者、結核精密検査の結果、肺結核にかかっていると診断された者、①の調査及び検査、胸部に関する臨床検査、肺結核以外の合併症に関する検査の結果、じん肺の所見があり、かつ、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸、原発性肺がんにかかっていると診断された者を除く。)
- スパイロメトリー及びフローボリューム曲線による検査
- 動脈血ガスを分析する検査(エックス線写真の像が第三型又は第四型(じん肺による大陰影の大きさが一側の肺野の三分の一以下のものに限る。)と認められる者を除き、①の検査又は胸部に関する臨床検査の結果、じん肺による著しい肺機能の障害がある疑いがあると診断された者のみ。)
③ 次の方法による結核精密検査その他の検査(①と②の調査及び検査(肺機能検査を除く。)の結果、じん肺の所見があると診断された者のうち、肺結核にかかっており、又はかかっている疑いがあると診断された者のみ実施。)
- 結核精密検査(この場合において、医師が必要でないと認める一部の検査は省略することができる。)
- 結核菌検査
- エックス線特殊撮影による検査
- 赤血球沈降速度検査
- ツベルクリン反応検査
- 肺結核以外の合併症に関する検査(医師が必要であると認める項目のみ実施。)(①と②の調査及び検査の結果、じん肺の所見があると診断された者のうち、肺結核以外の合併症にかかっている疑いがあると診断された者(この検査を受けることが必要であると認められた者に限る。)のみ実施。ただし、エックス線写真に一側の肺野の3分の1を超える大きさの大陰影があると認められる者を除く。)
- 結核菌検査
- たんに関する検査
- エックス線特殊撮影による検査
項目の省略
① 事業者は、じん肺健康診断を行う日前3か月以内に上記の検査の全部若しくは一部を行ったとき、又は労働者がそのじん肺健康診断を行う日前3か月以内にその検査を受け、その検査に係るエックス線写真若しくは検査の結果を証明する書面を事業者に提出したときは、その検査に相当するじん肺健康診断の一部を省略することができます。
② 事業者は、常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者が、
定期健康診断又は
特定業務従事者の健康診断の項目のうち④胸部エックス線検査及び喀痰検査において、肺がんにかかっている疑いがないと診断されたとき以外のときに、(2)の3.定期外健康診断を行う場合は、上記の項目の①及び②並びに③の結核精密検査と結核菌検査を省略することができます。
労働安全衛生法の健康診断との関係
事業者は、じん肺健康診断を行った場合は、その項目において、
一般健康診断又は
特殊健康診断の健康診断を行わなくてもよいとされています。
(4)労働者の健康診断受診義務
労働者は、事業者が行なう健康診断を受けなければならない義務があります。
ただし、事業者が指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合で、他の医師の行なうじん肺健康診断を受けて、エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでありません。
(5)事業者によるエックス線写真等の提出
事業者は、じん肺健康診断を行ったとき、又は(4)のただし書きの場合にエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面が提出されたときは、遅滞なく、じん肺の所見があると診断された労働者について、様式第二号による提出書にエックス線写真及び様式第三号によるじん肺健康診断の結果を証明する書面を添えて、作業場の属する事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長に提出しなければなりません。
(6)じん肺健康診断の記録の作成及び保存
事業者は、じん肺健康診断を行ったとき及び(4)のただし書きのときのじん肺健康診断に関する記録を、様式第三号により、作成しなければなりません。
この記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真は7年間保存しなければなりません。ただし、エックス線写真については、病院、診療所又は医師が保存している場合は、それでも構いません。
(7)じん肺健康診断の結果の通知
事業者は、じん肺健康診断を受けた労働者に対して、遅滞なく、じん肺健康診断の結果を通知しなければなりません。
(8)健康管理のための措置
① 事業者の責務
事業者は、じん肺健康診断の結果、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、就業上適切な措置を講ずるように努めるとともに、適切な保健指導を受けることができるための配慮をするように努めなければなりません。
② 粉じんにさらされる程度を低減させるための措置
事業者は、じん肺管理区分が管理二又は管理三イである労働者について、粉じんにさらされる程度を低減させるため、就業場所の変更、粉じん作業に従事する作業時間の短縮その他の適切な措置を講ずるように努めなければなりません。
③ 作業の転換
都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三イである労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを勧奨することができます。
事業者は、その勧奨を受けたとき、又はじん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、その労働者を粉じん作業以外の作業に常時従事させることとするように努めなければなりません。
また、都道府県労働局長は、じん肺管理区分が管理三ロである労働者が現に常時粉じん作業に従事している場合において、地方じん肺診査医の意見により、その労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、書面で、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事させるべきことを指示することができます。

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